映画『スノーデン Snowden』

先日、映画『スノーデン Snowden』を観てきました。

エドワード・スノーデン氏が誰なのか知らない人のために書くと、彼はアメリカ国家安全保障局やCIAで、インターネットによる情報収集のエキスパートとして勤務していた人です。アメリカ政府が世界規模で個人のプライバシーを収集し、それをアメリカの利益のために悪用していたことを知り、信頼のおけるジャーナリストを通じて世界に告発した人です。そのニュースは2013年、最初に報じたガーディアン紙をはじめ、世界のメディアに取りあげられ、スノーデンが自分の名前を隠さなかったことでさらに大ニュースになりました。

当然、アメリカ政府はスノーデンを見つけて捕らえようとしたのですが、その時、彼はすでに香港に。人権弁護士などにかくまわれながら香港を脱出、モスクワ経由で南米に渡ろうとした時に、アメリカ政府が彼のパスポートを無効にしたため、モスクワから他の国に出られず。しかし、ロシア政府が滞在許可を彼に与えたため、2013年以来、モスクワに滞在しているのです。今年の1月に、さらに3年間延長の許可が出て、2020年までロシアに滞在できるようになったとのニュースを先日読みました。

スノーデンが最初にコンタクトしたジャーナリスト、グレン・グリンウォルドが当時のいきさつやスノーデン氏の告発内容などをまとめて書いた本「暴露:スノーデンが私に託したファイル」があります。これを読んでアメリカ政府の行い(日本ももちろん情報収集の対象)に驚いたとともに、スノーデン氏の勇気、行動力、頭脳明晰ぶり、そして何より、当時30歳の若さでこれまでの生活を捨てる覚悟や思いに心が動かされました。

ジャーナリストのウォルドとともにスノーデンに会っていたビデオジャーナリストもいて、その人、ローラ・ポイトラスが、香港でスノーデンを撮影したドキュメンタリー映画もあります。『シチズンフォー CITIZENFOUR』。これはすでにDVDにもなっていて、なぜかYou tubeにも全編アップされているのです。しかも数カ国語の言語や字幕で。なので私は日本で公開される前にYou tubeで観てしまいました。今も削除されていないのは、もしかすると、映画の製作サイドの判断なのかも?なるべくたくさんの人に見てもらいために?個人的な憶測ではありますが・・・。映画には、スノーデン本人が登場して思いを語ったり、ジャーナリストたちとのやりとりが生々しく映っていて見ごたえあり。

そして本題。
ふぅ、説明が長くなりましたが、『スノーデン SNOWDEN』は、これら一連のできごとの前、彼がアメリカ国家安全保障局などに勤務していた頃にどんな仕事をして、またどんな理由でアメリカの行いを暴露するに至ったのかという過程を描いた映画です。

スノーデン役を俳優のジョセフ・ゴードン・レヴィットが演じています。監督は、社会派の映画をたくさん作ってきたオリバー・ストーン。スノーデン本人をメディアのインタビューなどでたくさん見てきたので、最初は俳優が演じていることに少し違和感がありましたが、数分で消えました。ジョセフ・ゴードン・レヴィットが好演。話し方などもとてもよく研究していると感じました。映画ではスノーデンがアメリカ国家機関の仕事をしていた頃のエピソードが複数描かれ、普通の良心を持つ人なら抱く疑問や違和感、それを自身の昇進のために抑える(きっと多くの職員はそれを選択)ことなく、世界に公表しようと決意していく流れ、そしてその後は『CITIZENFOUR』にも映っているようにジャーナリストとの接触などが描かれていきます。

ここではあまり詳しく内容を書きませんが、スノーデンは日本に赴任していたこともあり、日本政府に対するアメリカの態勢なども出てきます。とにかく、アメリカの情報収集プログラムでは、世界中のほぼどこでも人のプライバシーを暴くことができることがよくわかりました。特に、映画にも出てきますが、PCについている内蔵レンズは、PCのスイッチが入っていなくても、そこに映るものを見ることができるそうです。まるでフィクション映画のようなことが、事実に基づいたストーリーなので、ぞっとしました。ちなみに、私の全部のPCにも、内蔵レンズの部分に不透明テープを貼りました。この映画を観た人は、きっと同じようにするかも?スノーデンがいつも言う言葉に同感。「自分は隠す事が何もないから構わないという人は、自分のプライバシーの権利を放棄しているというに等しいのです」。映画のストーリーは少し急ぎ足なのですが、先に上記の本を読み、ドキュメンタリー映画を観ておくと話の内容がわかりやすいと思います。欲を言うなら、告発しようと決心する部分をもう少し深く描いてほしかったかな。

『スノーデン』が興味深いのは、『CITIZENFOUR』にも少し出てくる恋人のリンゼイ・ミルズさんとのラブストーリーでもあるということです。もちろん実話の。ミルズさんはインスタグラムもやっていて、写真を見るととても美しく、自由な魂を持った人という印象。国家の秘密を暴いて追われる身になった恋人との愛に、共感と涙・・。映画の中でも、ミルズさんを演じる女優さんがそれをたっぷり演じていました。

スノーデン氏のツイッターのプロフィールには「以前は政府のために働き、今は公共のために働いている」とあります。その行動に世界中の多くの人が共鳴し支えています。私も。最近、ロシアがスノーデン氏をアメリカに引き渡すかもしれないとの噂があるというニュースを読みましたが、単なる噂であってほしいな・・・。

すっかり長く書いてしまいました。おすすめの映画です。














# by mayumiish | 2017-02-13 01:04 | アメリカ・オセアニア

沖縄、大宜味小学校で写真の授業

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先日、沖縄県の大宜味小学校で、写真を教える授業をしてきました。

私が所属している日本写真家協会(JPS)の写真学習プログラム事業の一環です。昨年の秋頃に1回目の授業をして、カメラを5、6年の児童たちに渡して写真を撮ってきてもらう宿題を出しました。そして今回は、生徒たちが撮った写真から一人一点ずつ私が選んで、大きくプリントしたものを見ながらの発表会です。

大宜味小学校は沖縄県北部の大宜味村にあります。那覇からレンタカーで約2時間半。大宜味村への訪問は今回で3回目ですが、建物が多い中南部と違い自然が豊か。熱帯雨林的な木々が茂る山が海の近くまでせり出し、大変に美しい場所です。

授業では、生徒たちが撮影した写真について、一人一人前に出て、みんなの前で発表をしてもらいました。自由なテーマにしたので、撮影したものはまちまち。家族や友達を撮ったり、家の周り、学校、風景などなど。これまで東京などでも写真の授業をしたことがありますが、今回、ほかと違って印象的だったのは、とても美しい風景写真を撮った子が多かったことです。大宜味村の風景の美しさ、自然、海の表情をしっかりファインダーで切り取っていました。太陽が降り注ぐ沖縄ならではの光の移ろいをとらえていた子もいて感心。全体にのびのびした良い作品が多かったです。

大宜味小学校は2016年に4つの学校が統合してできた学校です。新校舎の目の前はエメラルド色の海!美しい風景を毎日目にして生活する子供たちの心にはきっと、美しい情緒が育まれていくのではないか、などと思えるのでした。

授業の後は、先生のご配慮で児童たちといっしょに給食をいただきました。大宜味小学校は教育や食育に力を入れていて、食器には陶磁器を使い、お料理も手が込んでいて美味しいのです。先日はコーンが入ったオムレツや豆苗などの野菜スープ、黒糖パンなど。たしか前回は、具だくさんのやきそばとハーブたっぷりの鶏肉でこれまた美味でした。

2月の初めの沖縄は桜の時期。授業の後、大宜味村の山のほうに車で行って、桜を見て帰りました。満開にはあと1、2週間という感じでしたが、私が好きな山桜なども見れて満足。沖縄に桜が咲くことを、先生から教えていただいて初めて知り、また、沖縄の桜は桃のように可憐なピンク色だと初めて知りました。青い海を背景にして、ヤシの緑の葉が揺れハイビスカスが咲き乱れる風景の中にある桜の光景が、なんだかとても新鮮でした。

5、6年生の担任の先生と校長先生には大変にお世話になりました!2回の訪問でしたが、子供たちを大切にしている学校だなと感じました。

緑深い自然に囲まれてのんびりと流れる時間が大宜味村の魅力。平地が少ないので大規模農業ができないなど課題もあるようですが、また訪れてもっといろいろ見たい場所です。
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(写真:上/大宜味村の高台から眺めた海 下/大宜味村に咲いていた桜 by iphone6S ©Mayumi Ishii)





# by mayumiish | 2017-02-06 01:32 | 日本

タイの黒、カンボジアの手仕事

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新年の始めに書いた通り、今年はもっとブログの更新を、と続けています(今のところ 笑)。

今月、タイとカンボジアの取材に行き、大変に興味深い場所や人々に出会いました。もし私がブロガーだったら、旅の詳細をいくらでも書きますが、しばらく先の掲載になる雑誌の仕事なので、まだあまり書けないのがなんとも歯がゆいところです。

タイではバンコクで時間が少しできて、10年ぶりにタイ人の友人に再会し、一緒にカオマンガイの美味しい店を満喫。タイでは昨年亡くなったプミポン国王に今も弔意を示す人が多く、黒い色の服を身につけるタイ人が目につきました。私も黒い麻のワンピースを一着持って行ったので、友人に会う時に着たら、「ちゃんと黒の服を着ているわね」という感じで喜ばれました。少し高級なレストランでも黒い服の人々が目につき。今年中にタイに行く方は、一応、荷物に黒い色の服を加えることをおすすめします。

久しぶりのカンボジアでは、伝統の絹織物が健在なことを確認してきました。しかも技術が進歩している印象。けれども織物の村に住む人に話を聞いたら、手織りの職人さんの人数は減る傾向にあるそうです。素朴で上品な光沢をたたえるカンボジアシルクの美しさは、いつまでも消えてほしくない宝ものの一つです。ほか、プノンペンでは、240通り界隈におしゃれなブティックが増え、ごちゃっとしていたロシアンマーケットはどことなく小ぎれいになっていました。でもマーケットの奥のほうにはフルーツや野菜どっさりの食材市場や屋台の喧騒がまだ残り、下町的な素顔が見えました。プノンペンはまさに新旧が交錯。

現在、ワクワクするアイデアを温め中。また近いうちにぜひカンボジアに行きたいなあ。というか、きっと行きます。

(写真はプノンペン、王宮前広場 by iphone6S ©Mayumi Ishii)

# by mayumiish | 2017-01-30 13:39 | アジア

多様性の国アメリカが・・・。

最近、ニュースを見ていると、毎日のようにアメリカのニュースに「はぁ?!」と思わず声を上げてしまいます。

今朝は、トランプ大統領がシリア、イラク、イラン、スーダン、リビア、ソマリア、イエメンの7か国の人々について、90日間、アメリカへの入国を停止したというニュース。また、すべての国からの難民の受け入れも27日から120日間停止するよう大統領令に署名したそうです。

すでに空港で足止めされている人々も出てきて、いくつかの空港には、抗議する人や支援者たちが押し寄せているようです。しかしなぜか、911テロの出身国サウジアラビア、また、エジプトやUAE出身者は禁止に含まれていません。

移民大国として、これまで発展してきたアメリカなのに、一体どうしたことでしょう。例えば、シリア移民の息子であるスティーブ・ジョブズ氏がアメリカで事業を始めたからこそ、現在、アメリカ人はiphoneを使えるのですよね。

昔、私がアメリカのNYに留学していた頃、英語の先生の一人が、イエメン出身の教授でした。ある晴れた日に、屋外で授業をすることになり、先生を囲んでほかの生徒たちと輪になって芝生に座っていました。何かをディスカッションしたのですが、授業の内容はよく覚えていません。でも、背の高い教授の明るい平和な雰囲気と、アクセントの強い彼の英語の発音がとてもわかりにくくて一生懸命聞き取ろうとしたことなどはよく覚えています。

その時に、アメリカの多様性、ふところの深さというものを初めて体感したような。また、英語の発音よりも話す内容が大切なのだな、などなど。あの教授は今頃どうしているのかな・・・。

一方、トランプ大統領の措置に反応して、カナダのトルドー首相が、カナダは難民の人々を歓迎するというメッセージを発しました。すてき。

多様性があるからこそ強い国アメリカが今後どうなるのか、目が離せません。

# by mayumiish | 2017-01-29 14:03 | アメリカ・オセアニア

Women's Marchの連帯力

1月20日にドナルド・トランプ氏が第45代目のアメリカ大統領に就任しました。
彼が女性やマイノリティーの人々への差別発言をしたり、アメリカという多様性社会に反する言動をしていることで、女性たちが立ち上がり、翌21日に大変に大きな抗議行動が行われたようです。

Women's March on Washingtonというサイトがデモ行進を呼びかけたところ、当日はワシントンだけでなく全米に広がり、また国境を軽々と超えて、世界のあちこちの都市で行われました。主にヨーロッパ各地ですが、アフリカのケニアなども。

各地のWoman's marchを写真でまとめたNew York Timesの記事。

Pictures From Women’s Marches on Every Continent / New York Times

どの都市でも、ものすごい人数の集まりで驚きました。彼らの自由な行動力に感動。これを見ると、もはや反トランプというアメリカだけの現象にとどまらず、世界の女性たちが連帯を確認し、高めていこうとするような意志も感じました。参加者は女性たちだけでなく男性も多く目につき、「MEN OF QUALITY RESPECT WOMEN EQUALITY」(上流の男性は女性の平等を尊重する」というバナーを見ました。またある団体がピンクのニット帽を編んでかぶろうと提案したら、またたくまに広がって、写真でも多くの人々がかぶっているのがわかります。もし私もアメリカにいたらきっと参加していたかも。

アジアで写真が載っていたのはタイのバンコクぐらい。やはりアジアと欧米では社会性が違うのでしょうか。日本は?というと、 ツイッターなどを見てもWomen's Marchとしての行動は見当たりませんでした。世界の中でも、女性の地位が100位以下と、先進国の中で極めて低い日本こそ、Women's marchが必要という気がしますが、どうでしょう。



# by mayumiish | 2017-01-23 00:50 | アメリカ・オセアニア

写真家です。文章も書きます ©Mayumi Ishii. All rights reserved.


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