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歌舞伎鑑賞

 先日、歌舞伎座で歌舞伎を鑑賞しました。友人のYさんが仕事の関係で招待券をいただいたとのことで、誘ってもらったのです。歌舞伎を観るのは実に久しぶり。

 すでにご存知の人も多いと思いますが、築約60年の歌舞伎座が建て替えられることになり、現在の建物で公演するのは2010年4月まで。歴史深く、国の「登録有形文化財」にも指定されているのに取り壊すのは、非常にもったいないと思うのですが、老朽化のためとのこと。すでに今年から「歌舞伎座さよなら公演」と題された演目も始まっています。

 鑑賞したのは「元禄忠臣蔵」の夜の部の三幕。場面ごとの3話に分かれ、市川團十郎、片岡仁左衛門、松本幸四郎の順で、それぞれに大石内蔵助を演じました。歌舞伎好きなYさんによると、この豪華な3人が一堂に揃うのは、さよなら公演ならではかもしれない、とのこと。

 最初の演目は、市川團十郎演じる大石内蔵助が、討ち入りの決心を浅野内匠頭の未亡人に伝える「南部坂雪の別れ」。赤穂浪士討ち入りの美学は個人的にはあまり共感できないのですが、それはさておき、二度にわたる病気を克服した團十郎の舞台を観ることができて、感慨深かったです。

 実ははるか昔、高校時代に課外授業で歌舞伎鑑賞に行き、團十郎(当時はまだ海老蔵でした)の舞台を観ました。私の席は花道のすぐ脇だったのですが、團十郎が花道を通って来た時にちょうど私の近くで立ち止まり、パッと見栄を切ったのです。会場が湧いて一斉の拍手。「成田屋!」のような掛け声がかかった華やかな一瞬。初めての歌舞伎、しかも間近で見た迫力が圧巻で「かっこいいー」と私たち高校生。そこで私は思わず「こっち向いてー」と声をかけてしまいました(アイドルか?)。すると團十郎氏が、くるっとこちらに顔を向けてくれたのです。わあ、なんて優しい!と忘れもしない感動でした。

 きっと彼は、高校生の一団を見てサービス精神を発揮してくれたのでしょう。当時、歌舞伎の内容はあまり理解してませんでしたが、「市川海老蔵」(当時の名前)という名前だけは、しっかり覚えた記憶があります。といっても、それ以来、歌舞伎ファンになったわけではないのですが。

 さて二つ目の演目は、Yさんがこよなく愛する片岡仁左衛門が演じる一幕「仙石屋敷」。赤穂浪士の討ち入りの後に、仁左衛門演じる大石内蔵助が、浪士を伴ってあるお屋敷を訪問し、事の次第を話すという場面です。この演目のほとんどの時間、仁左衛門は座敷に座って演技。しかも畳に両手をついて何度も深々と頭を下げながらの芝居です。

 一見動きの少ない静かな場面ですが、さすが仁左衛門なのでしょう。上半身の動きと語りだけで、強い存在感を醸し出していました。畳に両手をつく所作では、肩のライン、角度、そろえた長い指先まで神経がゆき届いているのがわかります。無駄な動きのない美しい所作とはまさにこれ!といたく感心しました。「仁左衛門は踊りも素敵」とYさんがいつも絶賛しているので、ぜひ観てみたいものです。

 ところで、歌舞伎座では一つの演目が終わるごとに休憩時間が入ります。最初の長い休憩では、多くの人が一斉にお弁当を取り出して各席で食事。私たちも三越で調達したお弁当を食べました。三越地下の一角に陣取るお弁当売り場には「観劇弁当」などもあり、歌舞伎文化の一端をしっかり担っているんですね。

 歌舞伎座の館内にも、さまざまな食べ物売店があります。軽食やお弁当をはじめ、おまんじゅう、きんつば、くずもちなどなど、目眩く甘味のラビリンス。買って客席で食べられるのどかさが、なんとも快い雰囲気です。Yさんの一押しは「たいやき」と「小倉アイス」とのこと。そこでお弁当の後に買いに行きましたが、定番人気とあって、たいやきは列の数人前で売り切れ。代わりに小倉アイスを食べました。休憩時間とはいえ、観客が客席で堂々と飲食する光景は、落語の寄席にも通ずるものがあり、歌舞伎もやはり庶民の文化なのだ、と改めて認識させられました。

 観賞後、次回はたいやきを(観劇より食い気?)などと考えながら歌舞伎座を後に。レトロ建築、美しい舞台美術、芝居、そして休憩時の楽しみなどが一体となって、独特の文化圏を作る現在の歌舞伎座空間が無くなるのは、つくづく残念。ただ、3階の狭い客席が広くなればうれしい、などの意見もあるようです。

 新しい歌舞伎座のデザインは「低層階が和風の高層ビル」って一体!?当初は戦前の建物を再現する予定だったものを、石原都知事が「銭湯みたい」「オペラハウスのようにしたほうが良い」などと注文をつけ(朝日新聞/2009年1月28日)現在のデザインに決まったそうです。オペラハウス・・・?

 とにかく、現在の建物があるうちに、時間を作ってまたあの世界を堪能しに行きたいと思うのです。

 歌舞伎座の「元禄忠臣蔵」は3/26まで公演しています。
歌舞伎座ホームページ
by mayumiish | 2009-03-13 18:03 | アート | Comments(0)


写真家です。文章も書きます ©Mayumi Ishii. All rights reserved.


by mayumiish

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