映画「ミツバチの羽音と地球の回転」/エネルギー選択の自由
東京は連日、熱帯的な猛暑です。
日曜日に、座・高円寺で映画「ミツバチの羽音と地球の回転」ースウェーデン-祝島 エネルギーの未来を切り開く人々ー(鎌仲ひとみ監督)を観てきました。先月の上映会に友人から誘ってもらったのに旅仕事と重なって行けなかったので、今回しっかり鑑賞しました。
映画の大きなテーマの一つは「エネルギーの選択」。瀬戸内海に浮かぶ小さな祝島で今まさに起きている原発反対運動、そして、とても対照的なスウェーデンの脱原発エネルギー政策の両方を追ったドキュメンタリーです。
山口県の祝島の対岸に、中国電力が上関原子力発電所の建設を計画しているそうです。原発ができると島の豊かな自然や、村の暮らしが壊されるとして、島の人々は抗議活動を28年間続けています。祝島では漁や農業が暮らしの中心。鯛やひじき、無農薬のビワ(本当に美味しそう!)など、素朴ながら豊かな自然の恵みを受けた営みが紹介されます。そして、この場所に原発ができたら、自然が壊され、生態系に影響を与えるだろうことは、すぐに想像がつきます。一番の懸念は、原発から出る温排水とのことで、海水が加熱されて魚やプランクトン、魚の卵、稚魚などが死んでしまうそうです。
この原発建設計画について、中国電力側は住民との話し合いを持たず、また町は議事録などを公開せず、建設を進める勢いのようです。現状は、工事のためのブイが海中に設置され、反対派の島民の人々は、きっと今日も抗議行動を行っています。高齢者の漁師や農家が多く、見ていて大変そうですが、反対運動のために懸命に声をあげています。
一転、場面はスウェーデンのとある小さな村。スウェーデンは1980年に国民投票で「脱原発政策」を決定しました。現在では持続可能なグリーンエネルギーの民間会社が競って参入し、消費者は自分で電力源を選択することができるのです。ある人の電気自動車のエネルギーが風力発電の電気だったり。しかも料金も安いそう。「日本は電力が自由化されていないって?どうして?」と一人のスウェーデン人が驚きながら問いただす場面は、こちらこそ驚きでした。現地では「電力選択の自由」が当たり前なのでした。消費者は環境に良いグリーンエネルギーを選ぶこともでき、波の力をつかった「波力発電」など、新しい技術もどんどん開発されているとのこと。
映画を観ながら、日本や他国のエネルギー政策について、自分が知らないことがあまりに多いことに気がつきました。
映画の最後のほう、祝島の若い島民、山戸孝さんが「島の暮らしを守るためなんかに原発建設に反対するのはおかしい」という電話が来た、というエピソードを語っていました。「守るためなんかに」などとどうして言えるのかな。
映画の後に鎌仲ひとみ監督が登場。そして、藤村靖之さん(「非電化工房」代表)、中村隆市さん(スロービジネススクール校長)、Yaeさん(半農半歌手)、岡本正昭さん(映画に登場した祝島のタイ釣りの漁師)たちと共に「未来の暮らしの選び方」というテーマの座談会がありました。
その後、質疑応答タイム。映画を観ていて素朴な疑問があったので、私もいくつか質問をさせてもらいました。
1)中国電力が上関原発を建設したら、その電力はどこに送られて誰が使う予定なのか?
鎌仲監督:中国電力はその電力を関西電力に売る予定。でも電気が余っているぐらいなので、実際は電力使用のためというより、Co2削減目標のためでは。
2)日本での「電力の自由化」の現状と将来の可能性は?
鎌仲監督:現状は、個人宅での自由選択はできない。企業は可能。
*会場でもらった資料によると、日本のエネルギー政策や計画は経済産業省主導で決められ、国会での議論もほとんどないとのこと。天下りも多いので、電力会社の既得権益を壊すことが難しい?
3)映画を観て問題を感じた人が個人的にできることは何だろう?
鎌仲監督:まず、知ることに努力してほしい。例えば、電力会社の広告を大きく掲載している大新聞は、原発についてマイナスのことは書けないと知ること。
会場の資料によると、世界的には2008年から2009年の間に風力発電量が31%増えたそうです。けれど日本では、新設の数が半減(17万キロワット)したとのこと。風力発電所の新設が最も多いのは中国(1300万キロワット)、次がアメリカ(992万キロワット)。また、EUでは2009年の新設発電容量のうち62%が、風力、太陽光、バイオマス、水力などの再生可能エネルギーとのこと。
自分が日ごろ使っている電力についてや、再生可能エネルギーの可能性について、これまでそれほど真剣に考えていませんでしたが、映画を観て、特にスウェーデンの取り組みを見て、日本の現状や可能性をもっと知りたくなってきました。そして現在も続いている祝島での反対運動の動向もモニターしたいです。
映画は上映会の形で全国で上映されるようです。日本のエネルギーや環境を身近なものとして考えたくなるきっかけになると思うので、ぜひおすすめです。
「ミツバチの羽音と地球の回転」公式サイト
ご参考に
祝島島民の会ブログ
虹のカヤック隊
祝島の原発反対運動をサポートする会
日曜日に、座・高円寺で映画「ミツバチの羽音と地球の回転」ースウェーデン-祝島 エネルギーの未来を切り開く人々ー(鎌仲ひとみ監督)を観てきました。先月の上映会に友人から誘ってもらったのに旅仕事と重なって行けなかったので、今回しっかり鑑賞しました。
映画の大きなテーマの一つは「エネルギーの選択」。瀬戸内海に浮かぶ小さな祝島で今まさに起きている原発反対運動、そして、とても対照的なスウェーデンの脱原発エネルギー政策の両方を追ったドキュメンタリーです。
山口県の祝島の対岸に、中国電力が上関原子力発電所の建設を計画しているそうです。原発ができると島の豊かな自然や、村の暮らしが壊されるとして、島の人々は抗議活動を28年間続けています。祝島では漁や農業が暮らしの中心。鯛やひじき、無農薬のビワ(本当に美味しそう!)など、素朴ながら豊かな自然の恵みを受けた営みが紹介されます。そして、この場所に原発ができたら、自然が壊され、生態系に影響を与えるだろうことは、すぐに想像がつきます。一番の懸念は、原発から出る温排水とのことで、海水が加熱されて魚やプランクトン、魚の卵、稚魚などが死んでしまうそうです。
この原発建設計画について、中国電力側は住民との話し合いを持たず、また町は議事録などを公開せず、建設を進める勢いのようです。現状は、工事のためのブイが海中に設置され、反対派の島民の人々は、きっと今日も抗議行動を行っています。高齢者の漁師や農家が多く、見ていて大変そうですが、反対運動のために懸命に声をあげています。
一転、場面はスウェーデンのとある小さな村。スウェーデンは1980年に国民投票で「脱原発政策」を決定しました。現在では持続可能なグリーンエネルギーの民間会社が競って参入し、消費者は自分で電力源を選択することができるのです。ある人の電気自動車のエネルギーが風力発電の電気だったり。しかも料金も安いそう。「日本は電力が自由化されていないって?どうして?」と一人のスウェーデン人が驚きながら問いただす場面は、こちらこそ驚きでした。現地では「電力選択の自由」が当たり前なのでした。消費者は環境に良いグリーンエネルギーを選ぶこともでき、波の力をつかった「波力発電」など、新しい技術もどんどん開発されているとのこと。
映画を観ながら、日本や他国のエネルギー政策について、自分が知らないことがあまりに多いことに気がつきました。
映画の最後のほう、祝島の若い島民、山戸孝さんが「島の暮らしを守るためなんかに原発建設に反対するのはおかしい」という電話が来た、というエピソードを語っていました。「守るためなんかに」などとどうして言えるのかな。
映画の後に鎌仲ひとみ監督が登場。そして、藤村靖之さん(「非電化工房」代表)、中村隆市さん(スロービジネススクール校長)、Yaeさん(半農半歌手)、岡本正昭さん(映画に登場した祝島のタイ釣りの漁師)たちと共に「未来の暮らしの選び方」というテーマの座談会がありました。
その後、質疑応答タイム。映画を観ていて素朴な疑問があったので、私もいくつか質問をさせてもらいました。
1)中国電力が上関原発を建設したら、その電力はどこに送られて誰が使う予定なのか?
鎌仲監督:中国電力はその電力を関西電力に売る予定。でも電気が余っているぐらいなので、実際は電力使用のためというより、Co2削減目標のためでは。
2)日本での「電力の自由化」の現状と将来の可能性は?
鎌仲監督:現状は、個人宅での自由選択はできない。企業は可能。
*会場でもらった資料によると、日本のエネルギー政策や計画は経済産業省主導で決められ、国会での議論もほとんどないとのこと。天下りも多いので、電力会社の既得権益を壊すことが難しい?
3)映画を観て問題を感じた人が個人的にできることは何だろう?
鎌仲監督:まず、知ることに努力してほしい。例えば、電力会社の広告を大きく掲載している大新聞は、原発についてマイナスのことは書けないと知ること。
会場の資料によると、世界的には2008年から2009年の間に風力発電量が31%増えたそうです。けれど日本では、新設の数が半減(17万キロワット)したとのこと。風力発電所の新設が最も多いのは中国(1300万キロワット)、次がアメリカ(992万キロワット)。また、EUでは2009年の新設発電容量のうち62%が、風力、太陽光、バイオマス、水力などの再生可能エネルギーとのこと。
自分が日ごろ使っている電力についてや、再生可能エネルギーの可能性について、これまでそれほど真剣に考えていませんでしたが、映画を観て、特にスウェーデンの取り組みを見て、日本の現状や可能性をもっと知りたくなってきました。そして現在も続いている祝島での反対運動の動向もモニターしたいです。
映画は上映会の形で全国で上映されるようです。日本のエネルギーや環境を身近なものとして考えたくなるきっかけになると思うので、ぜひおすすめです。
「ミツバチの羽音と地球の回転」公式サイト
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by mayumiish
| 2010-07-26 11:24
| 地球・自然・エコ
|
Comments(0)
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by mayumiish
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