ボランティアの心

 7月初旬の西日本の豪雨で、岡山県、広島県、愛媛県など広範囲にわたる大水害が起きてしまいましたね。

 被害にあってしまった方、避難生活をしている方々は、この猛暑で本当に大変だと思います。亡くなった方も多く、心からお見舞い申し上げます。

 ネットにも出ていましたが、地震など災害の多いイタリア政府がしているように、被災した方のためにすばやくテントを設置したり、近くのホテルなどに泊まれるように、日本政府は予算を出すなどできないものでしょうか。今後も地震など災害があるとわかっているだけに、自治体などを通して準備しておくこともできるのではないかな・・。

 災害時は、ボランティアの方々の活躍がめざましいですね。すぐに現地にかけつける方々をいつも尊敬します。今回も多くの人がボランティアで被災地に行っているようです。それぞれにできることをする姿は本当にすばらしいです。
 
 そんなたくさんの人々の一人、建築家の坂茂さんは、避難所となる体育館にプライバシー空間をつくるために、紙管と布をたくさん用意して、岡山県、倉敷市の真備や総社市などに設置しているとのニュースを見ました。彼はVAN(Voluntary Architects Network)というボランティア団体を作っていて、国内外の他の場所でも同様の活動をしています。

 以前、ある仕事で坂さんにインタビューした時、災害が起きた時は自分で必ず現地に出向いて、何をどのようにできるか、材料の調達場所、土地の環境などを見て決めるとお話ししていました。紙管を実際に見ると、太い竹のようにしっかりしつつ軽いので、災害地に適しているのだろうなと思います。また、坂さんは、京都の大学に彼の教え子の学生たちがいて、VANの活動を支えるシステムができているのが頼もしいです。

 ボランティアといえば、今月は、タイ北部のチェンライにある洞窟に閉じ込められた12人の子供とサッカーコーチの救助大作戦が成功しましたね。行方不明の彼らを探すために洞窟の奥深くまで泳ぎ、第一発見者となったのは、洞窟ダイビングの世界の第一人者であるイギリス人ダイバーでした。ボランティアとしてイギリスから急遽かけつけたのです。活動中、残念ながらタイのダイバーの方が一人亡くなってしまいましたが、イギリスを初め複数国のダイバー、洞窟の中で子供たちの救出の準備をしたオーストラリア人の麻酔医師など、世界各地からのボランティが大きな働きをしていました。日本からはJICAの灌漑の専門家が行き、洞窟の水を汲み出す技術の手助けをしたそうですね。

 さらに、忘れられないのは、チェンライの地元のボランティアです。ネットのニュースで目にしたのは、現地で作業をする人たちのために屋台のようにして食べ物を提供する人、洞窟近くで野営するタイの兵士たちの制服が汚れていることに気づき、毎晩引き取って夜中に洗濯し、翌朝届けていたランドリー店の経営者、そして、洞窟から汲み出した水が入って自分の畑が水没してしまうけれども、人命優先のために受け入れた農家の方もいました。まさにみんなの心が一丸となって見守っていたのですね。多国籍のボランティアが参加する救出作戦だったせいもあってか広く注目され、全員救出に成功した時は、世界中で安堵のため息が聞こえたに違いありません。

 子供たちを洞窟で最初に発見したイギリス人のダイバーJohn Volanthenさんの本業はITコンサルタント、Rick Stantonさんは消防士とのこと。救出を終えた時、「自分たちはヒーローではない。計算通りに一つ一つやっただけだ」と、彼らがとても謙虚に自然体の雰囲気でインタビューに答えていたのが印象的。これまで培ってきたダイビングの経験と技術を信じて、生命の危険もある救出活動を率いた彼らのボランティア精神の尊さに触れ、人間であることの良さを少し見直したのでした。そして、自分を振り返り、何ができるだろうと思ってしまうのです。


 

 







# by mayumiish | 2018-07-17 00:12 | つれづれ

玉のごとく

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(c) Mayumi Ishii

 私は中国の陶磁器が好きです。

 白磁なら端正で薄手の造形美がきわ立つ北宋代の定窯、生き生きとして闊達な職人の手さばきが文様に表れている磁州窯、ぽってりした丸みが、うっとりするほど魅力の唐代の荊州窯。青磁なら、江南の春の空や温かな水を思わせる龍泉窯、釉薬の厚みがふわりとした優雅さを醸す南宋官窯、冷たさと温かさの境に存在するような色の汝窯、そして景徳鎮の職人の技が光る薄手の染付け。

以前、中国やきものの旅というテーマの取材で、中国の産地や遺跡の場所をあちこち訪れて大好きになったのですが、昨年の秋、久しぶりに景徳鎮に取材に行った時は、新しい動きがたくさんあって、滞在が楽しすぎて帰ってきたくなくなるほどでした。

 だからでしょうか、日本でやきものを見る時も、つい、中国陶磁器に似ているものが好みになります。例えば、佐世保の三川内焼きは、豊臣秀吉が朝鮮戦争時に陶工を朝鮮から連れてきて始まったものとはいえ、もとは中国の影響を受けていることだろうし、染付の文様や風合いに中国陶磁の面影を感じます。また、大分県の小鹿田焼きも好きなのですが、飛び鉋とよばれる文様の技や釉薬の色合いは、磁州窯の刻花の技に似ています。

 ある日、たまたまネットで、青磁の作品を見かけました。最初、中国陶磁かなと思ったら、作者は日本人でした。その作風が気になり、ネット検索すると、ホームページは見当たらないものの、いろいろとその人の作品が出てきて、これまた中国の古陶磁に似ているのです。お皿などの形や色合いもクラシカルな感じで、どことなく龍泉窯で、汝窯で・・。となると、実物の作品を見てみたくなりますが、各地での展示会などをベースにしている作家さんのようで、見る機会がなかなかありませんでした。

 そんな中、ある手仕事マーケット的なイベントに出品するらしいことをネットで見つけ、行ってみました。そこで、とうとう作品を実際に目にすることができたのです。そして作家さん本人も。その方の名前は石黒剛一郎さん。貫入の入った青磁のお皿について「これは龍泉窯風ですよね?」と聞くと「そうです」とのお返事。「そして、こっちは汝窯なんです」と別の作品を示すのです。すっかり嬉しくなり、「この白磁のお皿はもしや定窯を?」と聞くと「もちろんです」との答え。

思ったとおり、石黒さんは中国の古陶磁を意識して作品作りをする陶芸作家さんだったのでした。あらためて作品をよく見ると、南宋官窯を思わせる雰囲気のものもあったりと、作品のたたずまいが落ち着いていてどれもすてき。中国陶磁話でひとしきり盛り上がり、日本では大阪の東洋陶磁美術館がいいとおすすめされました。

 実は、しばらく前に自宅の急須を割ってしまったばかりだったので、石黒さん作の急須を買って帰りました。ちょっと大きめですが、ふっくらしてシンプルな形がお気に入り。こちらは青磁というより青白磁とのこと。ろくろで本体の形を作り、注ぎ口と取っ手をつけたそうです。ふたの部分の最後の仕上げが一番大変だったなどの話をしてもらいました。やはり、作った人がわかるものっていいですね。

 買ってきた急須は、使い勝手もよく考えられたデザインで、とても使いやすいです。それも生活の道具として、大事な要素。写真では見えませんが、茶葉が注ぎ口から出ない設計になっていて、水切れも良し。さっそく毎日のように自宅で使っています。

 石黒さんは現在、愛知県の瀬戸市に近い岐阜の多治見市に工房を持っているそうです。定窯白磁の特徴の一つである彫り文様ももっと手がけたいとのことなので、どんなやきものを生み出すのか、今後も楽しみにしています。






# by mayumiish | 2018-06-30 07:30 | 日本

感恩の歌


あはれ はらから 心せよ 山より 高き 父の恩
海より ふかき 母の恩  知るこそ 道のはじめなれ
児を守る母の まめやかに  我が懐中を 寝床とし
かよわき腕を まくらとし  骨身を削づる あはれさよ
美しかりし 若妻も  幼兒 一人 そだつれば
花のかんばせ いつしかに  衰え行くこそ かなしけれ
身を切る如き 雪の夜も 骨さす 霜の あかつきも
乾けるところに 子を廻し  濡れたる處に 己れ伏す
幼き ものの がんぜなく 懐中 汚し 背を濡らす
不浄を 厭ふ 色もなく  洗ふも 日々に 幾度ぞや
己れは 寒さに 凍えつつ  着たるを脱ぎて 子を包み
甘きは 吐きて 子に與へ  苦きは 自ら 食ふなり


幼児乳を ふくむこと  百八十斛を 超すとかや
まことに 父母の 恵こそ  天の極まり無きが ごとし
父母は 我が子の為ならば 悪業つくり 罪かさね
よしや 悪趣に落つるとも 少しの悔いも なきぞかし
若し子 遠く 行くあらば 帰りて その面見るまでは
出でても入りて 子を憶ひ 寝ても覚めても 子を念ふ
髪くしけづり 顔 ぬぐひ  衣を求め 帯を 買ひ
美はしきは 皆 子に与え 父母は 古きを 選むなり
己れ 生ある その内は 子の身に代わらんことを思ひ
己れ 死に行く その後は 子の身を守らんことを願ふ


よる 年波の 重りて いつか 頭の 霜白く
衰へませる 父 母を 仰げば 落つる 涙かな
ああ ありがたき 父の恩 子は 如何にして 酬ゆべき
ああ ありがたき 母の恩 子は 如何にして報ずべき


達筆の母が、いつ書いたのだろう、
筆書きでしたため保存していた紙を見つけました。

調べると、古くに中国から伝わった仏教の「父母恩重難報経」に由来し、
竹内浦次という人が作詞した吟詠歌のようです。
心にしみる言葉だな、「感恩」・・・。

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(c) Mayumi Ishii






# by mayumiish | 2018-06-23 22:16 | 日本

『第2回 カタコトの会展 型彫り、型染め、カタヤブリ!』

ごぶさたしています。
ブログにログインしたのがとても久しぶりということに気がつきました。
時々見に来ていただいている方がいたら、すみません。
今年の後半こそはマメに・・・!

今日はイベントのお知らせです。

『第2回 カタコトの会展 型彫り、型染め、カタヤブリ!』がスタートしました。

6/4(月)〜6/10(日)
会場は盛況だった昨年と同じく、江戸からかみ東京松屋 4F(銀座線 稲荷町駅)。

カタコトの会とは、伊勢型紙を彫る現役の職人さんたち、型紙をそれぞれの技法で染める職人さんたち、デザイナーさん、こだわりの手織物を作り出す職人さんたちが伊勢型紙の世界を知ってもらって、広めようという趣旨で作られた会です。私は写真撮影&応援の協力メンバーとして参加しています。6/4の読売新聞朝刊と、5/30の朝日新聞朝刊・都内版にも会のお知らせが掲載されたので、お手元にあればご覧くださいね。

会場では毎日イベントがあり、体験できる楽しいワークショップや講演会などがありますよ。カタコトの会事務局から今年は何かやってくださいとのことで、私も今回、講演をすることになりました。

6/8(金) 15:00〜
カンボジア、ラオス、ミャンマーなど東南アジアの手織り物などについて、これまで撮影してきた写真をお見せしつつお話したいと思います。伊勢型紙や染めものについては、会場に行けば素晴らしい作品があり、職人さんたちもいることですし、どうしようかと考えましたが、伊勢型紙に関係ないテーマでもよいとのことなので、私が布作りなどの手仕事に興味を持ったきっかけとなる東南アジアの布についてお話しすることにしました。手仕事の布仕事つながりということで!

超絶で繊細な伊勢型紙をとりまく世界へ、お時間があればぜひお越しください。

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# by mayumiish | 2018-06-04 16:36 | 日本

ノルウェーの船旅フッティールーテン

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(北極圏からやや南下して白夜に近い午前1時半頃、日の出を待つ。静寂。(c)Mayumi Ishii)

1月も早くも10日目になりましたね。
今年はブログをもっと更新しますよー(毎年書いているような・・汗)。

昨年、ブログをなまけている間、あちこちの取材旅に出かけていました。その一つ、夏にノルウェー北部のキルケネスから南部のベルゲンまで船で縦断した旅が記事になりました。

『CRUISE』誌2018年2月号。発売中です。
フッティルーテンのノルウェー 北極圏から南部へ 3つの季節の中を行く」
写真撮影と文章を担当しています。

フッティールーテンとは「沿岸急行船」という意味で、約150年の歴史を持つ船会社です。

船旅取材の仕事を時々しますが、個人的には小、中規模の船が好み。フッティールーテンは、中規模、船内インテリアなどのセンスの良さ、キャビンの快適さ、ダイナミックな大自然の風景、ノルウェー各地の寄港地、そして美味しい食べ物と、個人的にとても好みのクルーズでした。

特に食事が素晴らしい。
寄港地ごとにノルウェーの新鮮な食材を仕入れる「コースタルキッチン」がコンセプトで、ノルウェー自慢のサーモン、マス、オヒョウ、タラ、はたまたトナカイの肉、ノルウェーの野生のベリー、ローカルの美味しいチーズなどがふんだんにメニューに登場し、毎回の食事が大変に楽しみだったのでした。

乗客はドイツ、イギリス、フランス人など欧米人が多かったのですが、リピーターもいて、みな口をそろえて「フッティルーテンの食事は美味しい」と言っていました。

また、記事のタイトル通り、ノルウェー北極圏から南部への旅では、数日間のうちに冬、春、初夏の季節を体験したのがとても興味深かったです。

乗船するためにオスロから北部のキルケネスに飛んだ時は、グレーの雲が空低くたれこめ、湖が白く氷っていて雪もちらつく冬景色。それでも白夜のシーズンなので、夜になっても真っ暗にならず、夜の10時過ぎ頃になっても、ずっとグレーの空。夜中近くに、サンセットらしい美しい夕映えが一時空を彩り、その後、空はまたグレーのグラデーション。

しかし、船が南下するにつれて雪景色が消え、陸地の木々に緑の葉が増えてきてトロンハイムという町ではすっかりと初夏の陽気になっていたのでした。
白夜なのでオーロラは見えませんが、とにかくノルウェーの多彩な季節を一挙に経験できるのは、夏の旅ならではの魅力です。

数日間同じ船上で過ごすので、顔見知りができるのが船旅の特徴。仲良くなったフランス人家族の女性は、かつて数学の教師をしていて、定年退職後に、アフリカ東部のインド洋に浮かぶレユニオンというフランス領の小さな島で、教師を募集していることを見つけたそうです。採用されて、数年間レユニオンに暮らしていた話をしてくれました。
身長160センチの私よりもずっと小柄で華奢な女性で、白髪のおかっぱ。話からすると、年齢はきっと60歳代後半かな?「島にとても美しいビーチがあって、毎日泳いでいたの」と、心からなつかしそうに話す彼女の姿を思い出します。

クルーズ中、美しい景色に船が差し掛かった時などに、一緒に船のデッキに立って、「寒いー、でも美しいねー」と。1人旅での取材だったので、それまで知らなかった人と共感できるそんなひとときの時間が楽しいのでした。

ところで、ノルウェーは、世界のジェンダーギャップ(女性の地位の高さ)が2位(2017年)という国です。日本が114位で非常に低いことに比べると、はるかに女性が強いなあと、実際にさまざまな場所で感じました。

ノルウェーは人権や環境に意識が高い国でもあります。フッティールーテンにもそれが貫かれていて、女性の管理職の比率が高く、また、船で働くクルーのお給料について、国籍などによって高低をつけることがないそうです。そのせいか、クルーの人々がみな元気な印象でした。

船に長年勤めているスタッフによると、ノルウェーの企業は基本的に週休2日だけれど今後は週休3日にしようという動きもあるそう。「人生を楽しむためにする仕事だからね。その反対になるのは良くない」ときっぱり。

北海の油田がノルウェーに経済的な豊かをもたらすからの余裕なのか、ノルウェー人のライフスタイルをもっと知りたいと思った旅でもありました。

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(ヨーロッパ大陸の最北端近くノールカップの岬。(c)Mayumi Ishii)











# by mayumiish | 2018-01-10 00:28 | ヨーロッパ・アフリカ

写真家です。文章も書きます ©Mayumi Ishii. All rights reserved.


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