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列車の中の涙

今回の南アフリカ取材は、数カ国のジャーナリストやテレビ局と合同の取材でした。
ケープタウンに到着後、喜望峰などのほか、
ローカル線に乗ってある町に行ったのですが、
その道中、とても印象的なことがありました。

ケープタウンの駅から私たちは一等車に乗せられて出発。
車内を見渡すと、他の乗客がほとんどいない状態でした。
写真を撮っていると、近くの座席に座っていた南アフリカ人乗客が、
「隣の車両は3等車ですよ、見に行ってみれば?」と教えてくれたので、
それならと、一人で行ってみる事に。

車両を隔てるドアを開けて三等車に入ると、別世界でした。
日本のラッシュアワーほどではないですが、立っている人もいるほどの混雑ぶり。
一等車に比べて半額の運賃なので、一般客はそちらに乗るのでしょう。
そんな中、ギターを弾く音色が聴こえるのです。
人をかき分けて見ると、盲目の老人が座席に座って弾いていました。
そして、その音色に合わせて、斜め向かいに座っている女性が歌っていたのです。
アフリカの唄なので、歌詞がわかりませんでしたが、
とても情熱的で素敵な音楽に聴こえました。

その時、ふと車両の奥を見ると、肌色の濃いアフリカ人ばかりの人々の中に
ぽつんと一人のアジア人男性が立ってました。
風貌的に日本人?または中国人の旅行者?
興味が湧いて、そちらに行って声をかけたら、日本人でした。
それで、よく見ると、彼が泣いているのです。
というか、瞳が潤んでいるというか。
「涙が出てしまって」とその人が言うので、驚いて「どうしたんですか?」と聞くと、
老人がギターを弾いて女性が歌っている光景に、感動してしまったと言うのでした。

その人はアフリカ縦断の旅をしてきて、最後に南アフリカに来たとか。
なので、列車に乗っている姿を記念に撮影してあげました。
後で写真をお送りする予定です。
彼は、あの後も無事に旅を続けているかな?

老人のギターは心にしみたというか、本当に素晴らしかったです。
本物のフォークソングみたいな?というかまさにソウル。
何という曲だったのかな・・。
寄付用らしき箱が床に置いてあったので、お金を入れようと思いきや
ちょうど小銭がなくて困っていたら、その日本人男性が2ランド貸してくれて、
箱に入れました。
すると、その老人の隣に座っていて、なんとなく不信そうにずっと私のことを見ていた
男性客の表情が急にぱっと明るくなり、投げキッスをしてくれました。
お金を入れたから?音楽に感動した心も少しは伝わったかな?

ヨーロッパ系南アフリカ人に会う事が多かった旅の中で、
南アフリカのローカルな文化の片鱗にほんの少し触れた思いがした、
とても貴重で心に残るひとときでした。
by mayumiish | 2013-06-02 03:57 | ヨーロッパ・アフリカ | Comments(0)
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